Book Review : こころの旅 神谷美恵子著
まるで詩を読んでいるかのような美しい文章、読みやすく理解もしやすい。
神谷美恵子さんの著作はすべて、文章の一つひとつがとても真摯に書かれていると思う。
言葉の一つひとつを真剣に選び抜いて吟味されている。
文章に格調の高さも感じる。
かといって突き放す感じではなく親しみやすい感じもする。
文章の持つ力強さを感じずにはいられない。
読んだ後の余韻も独特である。
力づけてくれると同時に清涼感も与えてくれるような文章である。
今までいろいろな本を読んできたが、NHKの100分de名著で取り上げられるまでこの著者については何も知らなかった。今まで知らなくて残念に思った。
中学か高校の頃、教科書などに出てきたらきっと夢中で読んでいただろう。
著者は、心理学の知見を丁寧に引くことで理知的に書き進めているが、同時に他の考え方もありうるということをちゃんと書き記すところが常にあり冷静な本である。
謙虚でそれでいて何事に対しても優しく寛大な姿勢が感じられる。
だからこの著者を信頼して読み進んでみようかなと思った。
参考になるのは、いろんな分野の他の人の知見を引用してくれているので、この本を1冊読めば読者それぞれがこの本で薦められた他の人の言葉や著作に広がる事ができて面白いと思う。
こころの旅、とタイトルにあるように心の問題なのだから当然答えは1つではない。
だから、これが正しいのだ、ということではないのだが、沢山の思索と検討を重ねて、これが今の最良の策ではないか、と穏やかに提案するような本であった。
珍しい雰囲気の本。
この人の本はもっと読んでみたいと思う。