Movie Review : マザー!
見知らぬ人たちの傍若無人な振る舞いに終始、嫌悪感を感じながら観る。
その嫌悪感こそ、人間が地上で我が物顔で自然を破壊したり、大地に穴があくくらい土を掘ったり、動物を貪り食ったり、鳥や虫が住めないくらい農薬をばら撒いたり、人が苦しんで死ぬくらい毒ガスをばら撒いたり、病人がたくさん出るくらい空気や土や食物を汚染している私たちの行動そのものに見える。
そしてさっさとリセットボタンを押して、忘れた頃にまた同じことを繰り返す。
愚かな私たち人間。そのことに対する嫌悪感。
キリスト教信者ではないので、アダムとイブとかケインとアベルとかそんなものを想定しては観ていなかった。
神として描かれる「夫」に一番嫌悪感を感じる。
見知らぬ人たちに家に踏み込まれて、嫌悪感を露にして抵抗する妻。
そしてそんな妻にニヤニヤしながら「大丈夫だよ」「何とかなるよ」「皆困っているじゃないか」「持っているものが人に分け与えるもんだ」なんて博愛的なことを言う。
でも一番身勝手なのはその「神」自体であって、最終的に周りが全て死に絶えても自分は生き残り、そしてまた同じものを再生をする。妻―mother earth―を犠牲にして。
歴史は(何度でも)繰り返す。
それが出来ると分かっているから、何が起こってもニヤニヤしていられるのだ。
一神教の「唯一全能の神」をどうしても信じられない「八百万の神」になじんている自分としては、
ほんとうにこの神の身勝手さには我慢ができない。
こういう映画をキリスト教文化圏の中で、よく作ったなと思う。
嫌悪感を感じているのは登場人物にであって、決して映画に対してではない、
とても考えさせられる上質な映画だけど、欧米ではスルーされたようですね。
まだ受け入れるには早いのだろうか。