Movie Review : 哭声 (コクソン)

もっともらしい犯人に一気に向かっていく狂気

 

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ある田舎の町に猟奇的な事件が多発する。

のんびりとした田舎だからそんな中でも住民や警察官までも少しのん気な感じ。

でも、疑いがある一人の見知らぬ日本人に向けられてからは一気にその日本人が怪しく見始める、

そこからはどんな証拠もすべてその怪しい人を犯人にするための材料となってしまう。

 

私たちが何かを思い込んだら、一気に誤解したまま突っ走ってしまう様子がうまく描写されている。

映画を見ている人が目撃者となって、その誤解をさらに加速させていく。

この事件で一番疑うべきだったのは、さもありなんという感じでその場にいた、

いちばん怪しくなさそうな人だったのか。そんなのその時は分からない。

最初のちょっとした疑いから、どんどん「皆が求める解答」にたどり着くために、

あらゆる状況が、疑わしい人を犯人に仕立てるために利用されていく。

そう思わされているのではなく、映画を見ている私たち一人ひとりが

「その人を犯人だと思いたい」という思いに引きずられていく。

冤罪などは、こういう状況でどんどん勢いよく突き進んで決め付けられていくのだろう。

異質なものに対する不安や恐怖、好奇心、無関心、差別心、人間が誰でも持っている感情で

ここまで真実が捻じ曲げることができるということが体感できる面白い映画。

 

好きな監督、ナ・ホンジン監督作品の韓国映画ですが、日本人俳優の國村隼さんが韓国の映画祭で助演男優賞を受賞しています。存在感があって凄みがあって、立っているだけで恐ろしかったです。森に棲む孤独な狼のようでした。

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