Movie Review : ヘルプ~心がつなぐストーリー
自尊心を失っていた1人の人間がそれを取り戻し、自分の誇りを取り戻す話
1960年代のアメリカ南部の人種差別の問題を通して、差別それ自体はもちろんだが、
もうひとつ別のテーマが描かれているように思えた。
作家志望の一人の女性の依頼で、メイドをしているその女性は自分のおかれている状況、生活や仕事、家族について語っていく。
子供の頃から受けていたひどい差別や息子を失った事で、自信を失って自分自身を無くしてしまった一人の人間。
そしてその人が、自分について語るということを通して、少しづつ自分自身について理解し始める。
もともと書くことが好きで一人でよく書いていたその女性は、その思いを人に聞いてもらうことによって、自信を取り戻していったのではないか?
そして作家が書いたものが本になり、さらに差別や反発を受けることになる。
今までだったら、やられたらやられっぱなしだったが、今は自分自身を理解し始めていて、それに対する誇りも取り戻しつつある。
彼女は仕事を失ってしまうが、息子が生前言ったように自分で選んだ道に踏み出す決意を固めて物語は終わる。
物語の最後、彼女の決意の言葉(ネタばれいやな人は読まないでください)
「私は、自分が知り合った人たちを思った。
これまでの人生を。
亡くなった息子は、「いつか家族から作家が出る」と。
それは、私なのだろう」
当時の上流階級の子育ては母親はやらず、メイドが母親代わりとして子育てをしていた。
生みの母親からあまり興味をもたれずに、自信をもてない5歳くらいの少女にメイドが別れ際に言い聞かせていた言葉がよかった。
メイド「いつも私があなたに言っていた言葉、覚えている?
あの言葉を絶対に忘れないで。今、それを言える?」
少女(こっくりとうなずいて)
「You’re kind.(あなたは優しい子)
You’re smart. (あなたは賢い子)
You’re important.(あなたは大切な子)」
少女は、かわいがってくれた唯一の人(メイド)を失ってこれから寂しい思いをするだろうが、折に触れて自分で自分にこの言葉を言い聞かせて生きていくのかなと思った。
そうして強く生きていって欲しいと思った。