Movie Review : やさしい本泥棒
「やさしい人々、やさしい映画」
母から引き離され弟を病気で失った少女があるドイツ人の夫婦の下に養子にくるところから物語が始まる。
新しい両親になかなか心を開けない少女
聡明だが、教育を受けられなかったため字が読めない
それに気付いた父親が少しずつ字を教えて一緒に本を読んでいくところがいい
「私も苦手なんだよ。いっしょにやっていこう」
私自身、本は、それを読んでいた時に近くにいた人や読んでいた時の景色など色々な思い出がそれ自体についてくる意味深いアイテムだなと思った。
「本を焼く」という行為があらゆる戦争や独裁でされてきたが、それは人間にとって最も過酷な仕打ちなのかもしれない。
少女が出会ったたくさんの人々と、彼らとの思い出の数々が描かれる。
喪失や絶望やちょっとした悪戯や友達とのおしゃべり、いじめっ子たち。
幸せな事ばかりじゃないけど彼女の人生を鮮やかに彩る人々
全ては終わりに向かっていく過程の人生のかがやき。
市長の妻は喪った息子の蔵書を息子の思い出と共に大事にしながら生きている
少女に本をたくさん見せてくれる
書くことを主人公に薦めてノートをくれたユダヤ人青年
「今日の天気は?」
「曇ってた」
「それじゃよく分からない、君自身の言葉で教えて?」
川に流されたノートを川にもぐって必死に拾ってくれた「レモン色の髪の少年」
「おてんば」と呼んでいつもそばにいてくれた
情け深い愛情をもっているのにそれを表現することを恐れた母親
少年のような軽やかな心をもったアコーディオン弾きの父親
やさしい人々たちを無常にも死神が連れて行く
死神は実に淡々と仕事をする。
でも実は現実世界よりもしかしてそのほうが幸せなのかもしれない。
彼女にはある使命が残っていた。
それを全うするために生き延びてそれを果たしたようだ。
彼女のもともと持っている使命を全うするための悲劇だったのか?
その悲劇があったから彼女の使命が生まれたのか?